DisplayPortのデュアルモードには3つ種類があるというお話

WQHDクラスのモバイルディスプレイを購入したところ、接続に戸惑ったのでその調査結果的なものを。

モバイルディスプレイ買いました


タイムセールとかクーポンとかを合わせまくって11kぐらいでした。
Taobaoなんかでよくあるモバイルディスプレイですけど、Amazon.co.jpでこの価格なら納得できるかなといった感じ。
WQXGAという名称のある解像度らしいですけど、個人的にはWQHD+とかにしてほしいです。
そのうちレビュー牡蠣ます。牡蠣食べたい。

DisplayPortをHDMIに変換するには2種類の手段がある

ここは以前の記事(http://yuutosi-net.check-xserver.jp/post-1064/)でも紹介しています。
DisplayPortは信号自体をケーブルで変換するアクティブタイプと、
そもそもDisplayPortから出てくる信号をHDMIやDVIなどと同じものにするパッシブタイプがあります。
アクティブケーブルは高機能で安定性がある代わりに、値段が高かったり、表示までのタイムラグがあったりするので必要でない限り避けたほうがお得です。

現状、4K/60HzをDP-HDMI変換で出すのであればアクティブケーブル以外に選択肢はありません。


今回の記事のメインはパッシブケーブル。
安価で安定性、表示までのタイムラグも無く、DisplayPortのようなシビアな接続もありません。
しかし、実はパッシブケーブルにも種類があるという話です。

パッシブケーブルには3種類存在する

「え、パッシブケーブルって端子の形状を変えてただけじゃないの」
実はそうではないらしいです。
DisplayPortの駆動電圧は3.3V。一方、HDMI等は5Vです。
そのため、ケーブル内で3.3Vから5Vに昇圧する回路が必要になるようです。
この昇圧回路を経由することが、出力されるHDMIのバージョン差が発生する原因です。
現在、3つの種類があります。

DisplayPort デュアルモード Type1

「デュアルモード対応」を謳うすべてのDisplayPort搭載機が利用可能なデュアルモードです。
最大165MHzのクロックレートを持ちHDMI1.2とほぼ同等の出力が可能です。
解像度でいうと、FHD/60Hzまで対応しています。
現状販売されているほどんどのパッシブケーブルがこのタイプです。


DisplayPort デュアルモード Type2

DisplayPort1.2を搭載したデュアルモード対応機で利用可能なタイプです。
最大300MHzのクロックレートを持ちHDMI1.4に近い出力が可能です。
解像度でいうと、WQHD/60Hzや4K/30Hzに対応しています。
「4K対応」と言いつつパッシブケーブルなものがこのタイプです。
↓今回私が購入したもの。上記のモバイルディスプレイで利用できました。


↓ThinkPad用に購入してたらWQHDで使えたもの。

DisplayPort デュアルモード Type3

DisplayPort1.3を搭載したデュアルモード対応機で利用可能なタイプです。
最大600MHzのクロックレートを持ちHDMI2.0とほぼ同等の出力が可能です。
解像度でいうと、4K/60Hzに対応しています。
今の所発売されているものはありません。

結局どれ買えばいいの

後々の事を考えると、Type2のケーブルをオススメします。
HDMI1.2からHDMI1.4は高解像度対応だけでなく、様々な規格対応が増えています。
せっかくDisplayPort端子を一つ潰すのですからできるだけ最大限活用したいものです。



できればType3対応のケーブルがほしいところですが、アクティブケーブルがどんどん安くなってきてるのであまりメリットが無いのかもしれません。

DisplayPort →パッシブケーブルのDVI変換でWQHD?

結論から言うと、不可能です。
DisplayPortはデュアルモードではDVIへの変換もサポートされていますが、シングルリンクDVIまでのサポートとなります。
これは「DisplayPortのピン数よりデュアルモードDVIのピン数のが多い」という物理的な問題です。
DVI受信側は「WQHDの場合はデュアルモード」と決まっているため、たとえクロックレートが高くてもピン数が足りなければ出力ができません。
どうしてもDisplayPortからデュアルモードDVIを使いたいなら、アクティブ変換を利用するしかありません。

Type-Cはデュアルモード未対応?

Type-CはDisplayPortのAlternate Modeに対応している場合がほとんどです。
しかし、そのDisplayPortはデュアルモードに対応していません。
ならどうしてType-C→HDMI変換がそんなに多いのかというとほぼすべてがアクティブ変換しています。
以前の記事でDisplayPortはパケット信号を利用して映像を送っているという話をしました。
この「パケット」というもののメリットとしては「容易に大きさを変化できる」という点です。
たとえば「解像度をここまでに制限するからこれだけしか帯域を利用しない」ということが容易にできます。
逆にいえば「ここまで帯域使えるから解像度をもっと引き上げられる」ということも。

海外のニュースサイトから画像を一部引用して説明します。

Type-C規格はもともと、USBのために開発されました。
そのためUSB3.0用の伝送回路が4つ用意されています。「TX1」「RX1」「TX2」「RX2」

TXは送信。RXは受信用となり、これで全2重10Gbps通信を実現しています。
しかしUSB3.1 Gen2では2つの伝送経路しか利用せず、2つ余ります。
その余ったレーンにDisplayPortを流そうという仕組みが「DisplayPort Alternate Mode」です。

パケット通信であるため比較的容易に実装することができます。
しかし、2レーンしか利用しないDisplayPortは解像度を下げざる得ませんでした。
そこで「USBを切り捨ててでも解像度を確保する」というものが4レーン仕様のDisplayPort Alternate Modeです。

2レーン仕様ではUSB3.1を使いながらDisplayPort1.2としてFHDクラスのディスプレイを2つ、もしくは30Hzの4K表示が可能です。
4レーン仕様ではUSBを使用できませんが、DisplayPortの完全な実装ができるため4K/60p、5Kまでも表示が可能です。

USB3.2はこの4レーンすべてを利用して通信を行うため通信速度が倍速化します。
USB2.0はType-C内部で別に回路があるため、4レーン仕様であっても利用可能です。


4レーン仕様のケーブルとなるとこちらの製品等になります。
「あれ?以外と安い?」と思うかもしれません。
そりゃそうです。DisplayPortではありますが、そもそもType-CからDisplayPortがそのまんま出ています。
逆にHDMIにするほうが高く付きます。

Type-Cにパッシブ変換器は使えない

以前の記事で散々「DisplayPortはHDMIに化けれる!」と言っていました。
しかしType-Cに実装されるにあたって機能が最小限まで切り詰められた結果、デュアルモードがサポートされなくなりました。
ということでDisplayPortからHDMIなどに変換するにはアクティブ変換が必須になりました。


こちらの商品は商品ページに「DisplayPort 1.2Altモード及び上のディスプレイに対応」とあります。
しかし「最大4K@30Hzから1080pまで」とあるので「DisplayPort1.2をHDMI1.4にアクティブ変換している」ということになります。


さらにこちらはまた別実装です。
こちらはHDMI2.0出力ですが、入力はDisplayPortです。
「DisplayPort1.4で入力してアクティブ変換してHDMI2.0で出力する」というケーブルです。
このため、DisplayPortにしか対応していない機器でも4K/60Hz出力が可能というメリットがあります。
「とりあえず確実に4K/60Hzやりたいならこれ買っとけ」ってレベルの製品です。

「HDMI Alternate Mode」という規格は一応ありますが、HDMI1.4までしかサポートしていない上、USB3.0も使用不可なのでイマイチ普及してそうにないです。